

美容皮膚科開業1年目 拡大していくための”分岐点”の乗り越え方
2024年8月20日(火)に開催したセミナー「美容皮膚科開業1年目 拡大していくための”分岐点”の乗り越え方」では、東京美容医療クリニック 院長の高 尚威先生をお招きし、開業1年目・2年目のクリニックが集客するためのポイントをうかがいました。
東京美容医療クリニック 院長 高 尚威 先生
奈良県立医科大学を卒業後、 湘南美容クリニックなど複数のクリニックに勤務。2017年に東京美容医療クリニックを開院し、経営を行っている。また、レーザー機器の製造・販売を行う株式会社K.O.techの代表も務め、「レーザーキング」として数多くの美容クリニックの支援に携わる。
開業1年目の集客のポイントとは?
―開業1年目の集客を成功させるために必要なことは何でしょうか?
高先生:一番大切なのは、自分の顧客がどのような人なのかを理解することです。大手美容クリニックで経験を積んだ医師は、開業1年目から集客に成功するケースが多い傾向にあります。
大手クリニックのなかで競争を経験しているため、自分のターゲット顧客を明確に把握できているからです。例えば、大手クリニックでクマ取りを専門にしていた医師は、クマ取りを希望する顧客についての理解が深く、開業時にもその強みを活かせます。
―ありがとうございます。現在の美容皮膚科の市場についてのお考えをお聞かせください。
高先生:美容皮膚科の開業は今後もさらに増加し、競争が激化していくと考えています。これは、ハワード・マークスのリスクとベネフィットのチャートで説明できます。

一番左の第1区画を公務員のようなローリスク・ローリターンの仕事とすると、一番右の第4区画が経営者などハイリスク・ハイリターンの仕事です。経済状況が厳しくなると、一番左と一番右は景気が悪くなると割に合わなくなっていきます。インフレで生活がどんどん厳しくなってきても、一番右の層の給料はあまり上がらないからです。
そこで、第1区画を目指す人が減り、医師や弁護士などリターンの大きい第2区画を目指す人が増えます。自分の優秀さにある程度自信がある人は、重役などにあたる第3区画を目指します。医師のなかで第1区画にあたるのは、心臓外科や脳外科といったやりがいは大きいけれどリターンが少ない領域です。第1区画の医師の生活が苦しくなり、リターンがしっかりもらえる美容にどんどん流れてくるので、競争は激化します。
―集客が難しくなるなかで、先生はどのようにクリニック経営の戦略を立てているのでしょうか。
高先生:クリニック経営において重要な要素は、6つあります。

開業当初は特に重要性の高い「People(人)」「Product(商品)」「PR(集客方法)」の3つに注力しましょう。
売上の規模は、「People(人)×単価×リピート回数」で決まります。まずは「People(人)」つまり自分の顧客はどのような人なのかを考えます。メイン顧客である普段から皮膚科に通ってくれている人たちの特徴を、一言で言えるようにしておきます。「20代前半から50代後半の女性」といったあいまいなイメージではなく、「20代前半の女性でにきびに悩んでいる人」といったように明確なイメージを描きましょう。そうすることで、その人たちに必要な商品が見えてきます。
次に価格です。自分の顧客に合わせて、高価格・中価格・低価格の3つの価格帯のどれかで商品を設定します。
リピート回数は、高級レストランのような一見のお客様が中心の業態と、スターバックスのように週4回も通うような固定客がいる業態の違いです。リピート回数が多い方が安定した収益を得られます。
―先生のクリニックでは、価格帯をどのように設定されているのでしょうか?
高先生:低価格帯に設定し、薄利多売路線に特化しています。市場には、高須クリニックをはじめとした高級ブランドと中価格帯、当クリニックのような低価格帯の3つの層があります。

低価格帯は、オペレーションの工夫などで1円でも多く原価を下げる必要があるため、最も難しい層です。最終的には1社くらいしか残らないと予想していますが、上手くいけば一番大きな利益が期待できます。
逆に、ハイブランドは、特別な技術や長年の歴史がないと成立しません。シャネルの鞄は150万円くらいでも売れますが、それはシャネルの持つブランドの価値が高いからです。そのためほとんどの場合、中価格帯に設定するのをおすすめします。内装も適度にきれいで、接遇も丁寧。医師も優しく、予想よりも手頃な価格設定のクリニックです。例えば、患者が5万円とくらいと想定している施術が実際には3万5,000円くらいで受けられるといったイメージです。
―自分の顧客について客観的に分析できない場合は、どうしたらよいのでしょうか?
高先生:率直に言いますと、まだ開業に踏み切るのは早いかもしれません。誰かに壁打ちするなどして、客観的な視点を身につけてから開業する方が、上手くいくと思います。
―開業1年目の集客におけるSNSや広告の活用法についてお聞かせください。
高先生:大切なのは、1つの集客チャネルに絞ることです。開業直後は全て自分一人でやらなければならず、リソースが限られているからです。
チャネルを選ぶ際も、「People(人)」と「Product(商品)」が重要です。自分のターゲットである顧客や自分の商品を購入してくれる可能性が高い見込み客が、どのチャネルから流入してくるのかを考えて動きましょう。
チャネル選択の際は、自分の得意分野も重要です。話すのが得意であれば動画コンテンツが、文章を書くのが得意であればXやブログと相性が良いですね。
あとは、TikTokなどの新しいプラットフォームの方が、全体のユーザー数が伸びる分、自然と流れに乗って集客しやすい傾向にあります。